多くの施設で行われている『抄読会』。
研修医の頃は、抄読会の発表担当が特に嫌いでした。
ローテート期間も短く、一般的な医学の勉強もしなきゃいけなくて忙しい。
その上、よくわからないジャーナルから論文を探し出すなんて…苦痛でした。
今回は、抄読会の発表を任されたときに、論文を探すオススメの方法を解説します。
この記事はこんな先生にオススメです!
- 抄読会で読む論文の探し方がわからない
- 抄読会でウケがいい論文を選びたい
- いろいろな論文の探し方を知りたい
どこで論文を探す?
どのジャーナルがいいか、上級医に聞く
一番早くて確実なのは、どのジャーナルから探せば良いか、上級医(あるいは抄読会の主催者)に聞いてしまうことです。
抄読会の目的に合った論文をいちばん確実に探しやすいからです。
抄読会を定期開催しているような施設であれば、オススメのジャーナルをある程度絞っている場合もあります。
どのあたりのジャーナルから探せば良いか、上級医に素直に聞いてみるのがよいでしょう。
主要5大雑誌から検索する
主要5大雑誌(ジャーナル)であれば、どんな専門科の内容も扱ってくれていることが多く、また、質が確実に担保されています。このあたりのジャーナルは多くの施設で定期購読しているので、論文検索もしやすいはずです。
- New England Journal of Medicine(NEJM)
- The Lancet
- Journal of the American Medical Association(JAMA)
- British Medical Journal(BMJ)
- Annals of Internal Medicine
この5つに続く形で、各分野のトップジャーナル(小児科のPediatrics、循環器のCirculation、血液のBloodなど)が続きます。
「各分野のトップジャーナルと言われても、どれかわからない…」そんなときは、前述のように上級医に聞いてしまうのがいちばん早いでしょう。
インパクトファクターが高いメジャー雑誌で探す
掲載誌のインパクトファクターの大小も、論文を選ぶうえではひとつの目安になります。抄読会で読むなら、「基礎医学系の内容なら10点、臨床のものなら5点」という意見を目にしたことがあります。ぼく自身、あまり明確に線引きをしたことはありませんが…。別記事で紹介したような、定番のジャーナルから選んだ論文であれば、インパクトファクターが低いということは少ないでしょう。
インパクトファクターが高いということは、他の論文で引用されている頻度が高いことの証拠でもあります。逆に、インパクトファクターが低いようなマイナー雑誌では、「当たり」(質の高い論文)を見つけられる可能性が下がります。投稿する人や、査読をする人の立場になって考えてみると、「良い論文だからインパクトファクターが高いところに投稿したい!」「良い論文だから採用したい!」という考えがはたらくはずですよね。
時間の節約のためにも、まずはインパクトファクターが高い、メジャーな雑誌で論文を探しましょう。
PubMedで検索してみる
「論文を探すなら、とりあえずPubMed」という方も多いはずです。興味のあるワードをPubMedで検索して、出てきた論文の中から抄読会に使えそうなものをピックアップします。
ただし、抄読会に慣れないうちは、「どんな論文が、抄読会に適した良いものとされているのか」も分かりづらいと思います。質の高い論文を効率よく見つけるためには、ここまでで紹介してきたような方法を使ってみることをオススメします。
ちなみに、興味のあるワードについて定期的に情報収集をしたい場合には、特定の検索内容について定期的にメールなどでアラートをさせる方法もあります。詳しくはいずれまた別記事で紹介します。
論文紹介サイトを使ってみるのも手
どうしてもうまく見つからなければ、論文紹介サイトを参考にしてしまうのもアリです。臨床的にインパクトがあるような論文を、要点をまとめて日本語で紹介してくれているサイトが数多くあります。あえてここで紹介することはしませんが、Googleなどで検索してみてください。各科の専門の先生が個人ブログで紹介しているものもありますし、m3などの医師向けサイトで論文のアブストラクトを紹介している場合もあります。
注意点として、内容の正確性や、実際に臨床に役立つかどうかというところは完全に信用できるわけではないかもしれません。書いてある内容をそのまま抄読会で発表するのではなく、あくまで抄読会のネタ探しの参考にする程度に留めておいてください。
生成AIに論文検索を任せてみる?
あらゆる業界を席巻している『生成AI』、医学論文の検索では「使える」んでしょうか?
個人的な結論としては「使える」です。
文献検索で有名なのが『Perplexity』と『Elicit』ですが、『Perplexity』のほうが適切に検索カバーしてくれるようです。
例えば、最近の市中肺炎のレビュー(JAMA Sept.16, 2024)を引っ掛けられるのか試してみました。どちらも英語で検索するほうが良いそうなので、英語で検索します。
↓『DeepL』で英文に翻訳
Find the latest review articles on Community-Acquired Pneumonia from high impact factor medical journals on Pubmed.
- Perplexity:JAMAのレビューを含めたいくつかのレビューを参照元の文献として提示すつつ、簡単な要約もつけてくれる
- Elicit:要約はつけてくれるが、肝心のJAMAのレビューをひっかけられない
- 「〇〇(疾患名)に関する最新のレビューを検索してください」
- 「〇〇(疾患名)に対する□□(薬剤名)の有効性についての論文を検索してください」
- 「〇〇(疾患名)と鑑別が必要な疾患について教えてください」
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どんな論文を探す?
できるだけ新しい論文がいい
できるだけ新しい論文のほうが、抄読会では喜ばれます。理由は単純で、「まだその論文を読んだことがない」参加者が多いからです。発表年で言えば1年以内、できれば3〜5年以内がいいかなと思います。大学病院など、先端医療を担う施設であれば、1年以上前に発表された質の高い論文はすでに抄読会で発表されてしまっていることが多いでしょう。いっぽう、市中病院での抄読会であれば、発表から3〜5年以内のものでも十分だという印象です。
抄読会で発表したい論文が10年以上も昔のものであるなら、その論文を抄読会であえて発表する意義を明確にするべきです。たとえば、「最近自分が経験した症例に関するメジャーな論文」などでしょうか。
Original Articleが定番
批判的吟味について勉強するという意味では、ReviewよりもOriginal Article(原著論文)のほうが有用とされています。その中でも、研究手法としてRCT(Randomized Controlled Trial)を用いているものがすすめられます。Review Articleは内容がよくまとまっていて、個人で読むのにはとても役立ちますよね。ただし、「研究対象者の数が実は少ない」「介入の方法に実臨床とのズレがあり、自身の診療に応用しづらい」などのような落とし穴がありえます。
抄読会で「内容の妥当性について批判的吟味を加えながら読む」練習をするうえでは、Original Articleを使うことが多いです。
個人的に気にしてほしいポイント
研修医の先生に抄読会の発表を担当してもらうときに個人的に期待しているのは、「最近担当した症例に関するテーマでの論文を選んできてくれること」です。
インパクトファクターの高い雑誌の、質が高い論文も勉強になります。ただ、個人的には、「臨床の中で生じた疑問を解決する」という目的で論文検索を行う、ということを大事にしてほしいと思っています。それに、担当症例に関するテーマであれば、内容を読むのにもより力が入りますよね。
「論文の質の高さ」も大事ですが、はじめのうちはどんなものが「質が高い」のかも分かりにくいと思います。(ぼく自身、自分で十分に分かっているとは言い難いです…。)抄読会の準備を面倒に感じることもありますが、読む動機があれば多少なりとも準備はしやすくなるでしょう。
まず、どこで論文を探すかが大事。
抄読会に慣れないうちは、素直に上級医にオススメジャーナルを尋ねるか、ハズレのない超メジャージャーナルから選ぶか。抄読会のネタ探しに時間をかけるあまり、論文自体を読み込む時間が足りなくなるのでは本末転倒です。自分のレベルに合った論文検索の方法を用意しておきましょう。
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